行政書士法改正と登録支援機関の注意点 業務範囲の理解とこれから求められる支援のかたち
はじめに
特定技能制度の拡大に伴い、登録支援機関の役割は年々重要性を増しています。
外国人材の生活支援・職場定着支援を担う専門機関として、多くの受入企業にとって欠かせない存在となりました。
在留資格申請書の作成を手伝っている
理由書や説明書を作成している
しかしその一方で、次のような事例が報告されてきていました。
これらの行為は、行政書士法に抵触する可能性があります。
行政書士法改正および運用厳格化の流れを踏まえ、登録支援機関として注意すべき業務範囲を整理します。令和8年1月1日に改正行政書士法が施行されました。
この改正によって、行政書士業務の明確化がはっきりとなされました。
行政書士法改正によって明確にされた行政書士の独占業務の規定
(業務)第一条の三
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
行政書士法1条の3は行政書士の独占業務と呼ばれているものです。行政書士以外の者は行うことができません。
在留資格申請が「官公署提出書類」にあたること
在留資格に関する申請は、
在留資格認定証明書交付申請
在留期間更新許可申請
在留資格変更許可申請
いずれも出入国在留管理庁へ提出する官公署提出書類です。
したがって、これらの書類作成は行政書士業務に該当します。
(行政書士法第19条)
(業務の制限)第十九条
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
この報酬を得てという文言から、今まで無報酬で行政書士でない者が行政書士業務を行う事例がありました。今回、いかなる名目によるかを問わずという文言が加わることにより、たとえそれが支援費など他の名目で支払われていた場合などは、処罰の対象となります。
違反すると行政書士・行政書士法人、弁護士・弁護士法人以外が有償で書類を作成すると、1年以上の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。(21条)
登録支援機関の法的業務範囲
登録支援機関の業務は、出入国管理及び難民認定法に基づく支援計画の実施です。
主な業務は以下のとおりです。
事前ガイダンス
空港送迎
住居確保支援
生活オリエンテーション
日本語学習機会の提供
相談・苦情対応
定期面談
行政機関への通報
登録支援機関は生活・就労支援に関する業務をすることが規定されています。
登録支援機関ができるのは「取次」であって「書類作成」ではない
最も誤解が多いポイントです。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の3に規定する業務を行ってはならない。
書類作成は行政書士の独占業務であることが明確に示されています。
登録支援機関が関与できるのは、あくまで取次行為です。
入管手続きにおける「取次」とは、
申請人本人に代わって、完成した申請書類を出入国在留管理庁へ提出する行為
を指します。
つまり、申請内容の作成・設計・判断には関与せず、
持参提出、受領、補正書類の提出
といった事務的・物理的行為に限定されます。
取次は完成した書類を提出することを指します。
取次の具体例
完成済み申請書の提出
行政書士作成書類の持参
企業作成資料の提出
追加資料の提出
つまり、入管への提出行為に限られます。
取次と作成の境界線
| 行為 | 適法性 |
| 完成書類の提出 | 〇 |
| 行政書士作成書類の持参 | 〇 |
| 企業作成書類の提出 | 〇 |
| 申請書の記入代行 | × |
| 理由書作成 | × |
| 記載内容の指示 | × |
行政書士業務に該当し得る具体例
1.申請書の記入代行
雇用理由の記載
業務内容の作文
転職理由の作成
2.理由書・説明書の作成
3.添付書類の選別・指示
必要書類の取捨選択
表現修正の指示
違反時に想定されるリスク
・登録支援機関
行政書士法違反
登録取消(5年間新たな登録ができなくなります【入管法19条の26第1項7号】・業務停止
申請を行った担当者でなく、その者を雇用している会社も処罰の対象となります。(両罰規定)
第23条の3 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第1号の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。
・受入企業
不適正な受入れ認定され、特定技能の受入れが停止されることになるかもしれません。
・外国人本人
不許可、在留資格取消のリスクがあります。
行政書士法改正・運用強化の方向性
無資格関与の排除し、適正な外国人労働者の受入れを進めていこうとしています。コンプライアンスを確保し、適正な運用を行うためには、①行政書士または弁護士との業務提携、②受入れ企業の特定外国人受入れ業務の内製化が考えられます。
コンプライアンスを確保する最善策は、行政書士または弁護士との業務提携です。
役割分担のモデル
行政書士
・添付書類・申請書作成
・理由書作成
・入管提出代理
・不許可対応
登録支援機関
・生活支援
・定期面談
・完成書類の取次提出
業務提携によるメリット
コンプライアンス確保
企業からの信頼向上
申請の許可率向上、スピード向上
今後求められる登録支援機関像
これからの登録支援機関に求められるのは、「申請まで対応する機関」ではなく、
コンプライアンスを遵守する信頼できる機関です。
まとめ
改正行政書士法により行政書士業務が明確に規定されるようになりました。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の3に規定する業務を行ってはならない。
登録支援機関が担うべきは支援業務であり、在留資格申請は行政書士業務です。
両者が適正に役割分担し、企業を含めた三者連携を構築することが、
外国人の安定就労、支援機関の信頼性向上
とコンプライアンス順守した信頼される外国人支援につながります。
弊所では、登録支援機関の方との業務提携、受入企業の内製化のご相談を承っています。
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尼崎市の女性行政書士。就労ビザ申請(技術・人文知識・国際業務、特定技能、経営・管理など)のことなら、当事務所にご相談ください。永住ビザ申請、帰化申請、アポスティーユ認証にも対応。尼崎市、大阪市、神戸市、西宮市、芦屋市など。







